パンに、麺に、ピザ生地に、試作品続々。
安心とおいしさを千葉県東金の地から 東金産小麦粉できました。
国産産小麦粉
一日3食お米を食べるという人は減っています。成人一人あたり平均のお米の消費量はここ100年で3分の一に減少したといわれていますから、単純計算すると、「1日に食べるお米の量が3合から1合に減った」或いは「一日3食が1食に減った」ことになります。
代わって、パン食やパスタ、ラーメン、などの小麦の消費量は安定していてむしろ増えています。食事にパンを選ぶと自ずと食事は油脂類の多い洋食になりがちです。そうした「食の欧米化」によって生活習慣病患者の増加が指摘されて食の安全が叫ばれるようになりました。ところが、人々の健康志向が高まっているにも関わらず、国産の小麦の供給は高くはありません。
それには日本の気候が関係していました。パン・ラーメン用の小麦は収穫前にじっくりと熟成しグルテンを蓄えさせる必要があるのですが、本州以南には梅雨があるためにそれが難しく、品質面でもコスト面でも輸入に依存せざるを得ないのだそうです。
それでも、時代とともに北海道や長野県などの産地で品種改良が進み、関東圏でも小麦栽培にチャレンジする農家が増えているそうです。
東金産への挑戦
『休耕畑を麦畑に変えて千葉東金産の小麦を作る、地元の飲食店やパン屋さんに地域食材としてこれを供給したい。』東金市内嶺南地区のコメ農家である市東さんもまた、10年くらい前から当地で小麦栽培ができないか研究をしてきました。
東金小学校嶺南分校(現在の嶺南幼稚園)の出身の幼馴染み達に声をかけて、実際に栽培を始めたのは5年前。以来、どの品種をどうやって栽培していつどのようにして収穫するか、毎年試行錯誤を繰り返しています。当初は土壌も整っておらず、麦そのものよりも雑草のほうが丈がのびてしまって刈り取りできなくなるなどのハプニングも経験しました。まさに何もないところからのスタートでした。
果たして東金の地から小麦粉は誕生するのか?収量がまとまらないと製粉してくれる業者さえ見つかりません。当然ですが、品質が安定しないと買い取って貰うことはできません。試行錯誤を続ける中で、赤かび病等の病害や湿害も経験しました。赤かびや残留農薬などを何度も検査し、タンパク質や水分量などの品質評価を受けます。出来上がった製品の保管場所の手配も必要です。
地域の食文化に直結
現在使用している品種は「ハナマンテン」。長野県で開発された超強力タイプの硬質小麦で、パンや中華麺への加工適性が高いのが特徴で、もちもちとした食べ応えの仕上がりになります。
そうやってできた小麦を、試験的に地元にある木村屋製パンや中村製麺所などに実際にパンや麺に加工して貰いました。木村屋製パンさんでは、昨年開催された東金商店街の産業祭りイベントでコッペパンの試作品を配布してみるなどして、少しずつ市場に出す準備をしています。このほか、イタリアンレストランにはピザ生地として試して貰ったり、デザートを試作して貰ったりと、各所の飲食店でも使い勝手を試して貰っており、地元産の小麦粉を地元で消費して貰える連携を着実に広げて行っているところです。
中村製麺所さんでは「今回の小麦粉はまだ中力に近い印象でうどんが美味しかった。日本の地粉の特徴と同じで麵にすると色が黒っぽい感じになります。東金でも埼玉や群馬と同等の小麦粉ができたと思います。東金にも地粉の麺文化が発展すると嬉しいですね。」と高い評価。
市東さんらはこの小麦粉のブランド名を『鴇嶺(ときがみね)』と名付け、飲食店だけでなく、道の駅でも購入できるように準備を進めています。
パンにうどんに、ピザに。生産者と消費者がこんなに近い食材も珍しい。私たちの食卓にやってくるのが楽しみです。
挑戦はつづく
現在、圃場では次の小麦が生育中です。市東さん達の今後の課題は有機栽培だそう。「安心とおいしさを千葉県東金の地から」と言うからには有機JAS認証をとれる基準を目指し、持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みにも関心を持たれていました。
農業は天候との戦いであり、土との対話。簡単なことだけどそれが難しい。あとは「適正な時期に種をまき、適正なタイミングで収穫をする」と市東さんは繰り返します。新規就農研修中の若手メンバーも増えて、生産量も増やしていく予定です。そうやって、一年一年課題をクリアしながら、地域の加工業者や飲食店、小売店や消費者に見守られながら東金産小麦粉『鴇嶺(ときがみね)』のブランドが成長していく姿を夢見ています。
【問い合わせ】S・Kネットサービス㈱
0475‐53‐5099(市東)